ゴムボートを買うときに、私が一番悩んだのは、値段でも大きさでもなく、素材でした。
PVCか、CSMか。カタログを見比べて、何日も迷った記憶があります。結局、私は価格でPVCを選びました。あれから約6年。今のところ、この選択を後悔してはいません。
この記事では、2つの素材の違いと、私がPVCを選んだ理由、そして約6年経った今の状態を、正直に書きます。
PVCとCSM、何が違うのか
ゴムボートの生地に使われている素材は、大きく2つに分かれます。
PVC(塩化ビニル)は、価格が手頃で、モデルの選択肢が多い素材です。生地に張りがあって、空気を入れるとしっかり硬くなります。一方で、寒いと生地が硬くなり、暑いとやわらかくなりやすい、と言われます。
CSM(クロロスルホン化ポリエチレン)は、いわゆる「ハイパロン」の名前で知られてきた合成ゴムです。紫外線や熱、薬品に強く、温度によって硬さが変わりにくいのが特長です。そのぶん、価格は高くなります。
一般に言われている耐久年数は、CSMが10〜15年ほど、PVCが3〜10年ほど。販売店やメーカーの説明を見ると、だいたいこの幅に収まっています。ただ、この差は生地そのものの強さというより、接着部分がいつまで持つかの差だ、という説明をよく目にします。ゴムボートは、生地を貼り合わせて作られているので、最後にだめになるのは、たいてい接着部分です。
保証の期間にも、差が出ています。メーカーによりますが、CSM製は5年、PVC製は1年、という設定になっていることがあります。
なお、素材の劣化は、使っても使わなくても、時間とともに進みます。「あまり乗らないから長持ちする」とは限らない、ということです。
私はPVCを選びました。理由は価格です
私が比較したのは、ジョイクラフトとアキレスでした。かなり迷いました。
決め手になったのは、結局、価格です。同じくらいのサイズで比べると、CSM製はかなり高くなります。初めてのボートで、そもそも自分が続けられるかどうかも分からない状態でした。そこに一番高い選択肢を選ぶ勇気は、私にはありませんでした。
迷った理由は、はっきりしています。「PVCは10年ほど、CSMは15〜20年ほど持つ」という話を見ていたからです。1年あたりの金額で考えると、CSMのほうが安くつくかもしれない。そう考えると、また分からなくなる。この計算を、何度もやり直しました。
最後は、「まず始めてみて、続いたら次を考えよう」と決めて、PVCのジョイクラフト オレンジペコ323ワイドを買いました。
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約6年、今のところ劣化は感じていません
買ったのは2020年12月です。約6年が経ちました。
今のところ、生地のベタつきや、接着部分の浮きは見当たりません。空気の抜けも、極端に早くなってはいません。2021年に一度パンクしましたが、これは素材の劣化ではなく、小さなピンホールでした(その話は「ゴムボートがパンクした。沖で気づいてから、付属の補修キットで直すまで」に書いています)。
ただ、この結果は、そのまま参考にはできないと思います。
- 実際に海で使ったのは、最初の約2年です。出航は22回でした
- その間も、その後も、ずっと室内で保管しています。屋外に置いたことは一度もありません
PVCは、保管のしかたで寿命が大きく変わる、と言われます。私の「6年で劣化なし」は、室内保管を続けた場合の話です。屋外に置きっぱなしにする予定なら、同じようにはいかないはずです。保管の方法は、「ゴムボートは、膨らませたまま室内に。約6年、こう保管しています」にまとめています。
実際、知人が中古のゴムボートを安く譲ってもらったことがあります。屋外保管のものでした。使い始めて間もなく、パンクに悩まされていました。素材より、保管のほうが効くのだと思います。
規定の空気圧まで入れると、意外とカチカチになる
PVCを使ってみて、意外だったことがあります。きちんと規定の空気圧まで入れると、想像よりずっと硬くなるということです。
買う前は、「ゴムボートだから、多少はふわふわしているのだろう」と思っていました。実際は違います。規定の圧力まで入れたチューブは、手で押しても、ほとんど沈みません。板のような感触です。船の上を歩いても、足元が頼りない感じはしません。
私のボートの取扱説明書には、こう書かれています。
| 部分 | 規定の空気圧 |
|---|---|
| 本体のチューブ | 200〜250ミリバール(20〜25kPa) |
| エアキール | 350ミリバール程度(35kPa) |
| エアフロア | 500ミリバール程度(50kPa) |
ミリバールは、天気予報でおなじみのヘクトパスカルと同じ単位です。数字だけ見るとピンときませんが、チューブより、キールやフロアのほうが、ずっと高い圧力で入れることになります。
気室ごとに、均等に入れることも大切です。1つの気室だけを入れすぎると、内側の隔膜が破れることがあります。説明書にも、はっきり書かれていました。
圧力計つきの電動ポンプは、確かに便利。ただし音が大きい
私が使っている電動ポンプ(BRAVO BTP12)には、圧力計と、圧力を決めるダイヤルが付いています。入れたい圧力に合わせてスイッチを入れておけば、その圧力になったところで自動的に止まります。感覚で「このくらい」と判断しなくていいので、これは本当に便利です。

難点は、音がかなり大きいことです。浜に着くのは、たいてい夜明け前です。駐車場や浜のすぐそばに民家があるときに、この音を出すのは気が引けます。
そういう日は、大変でも、付属のフットポンプで入れます。静かなのはいいのですが、空っぽの状態から規定圧まで入れるとなると、おおよそ15〜20分は、シュポシュポやり続けることになります。規定圧の手前から急に重くなるので、足も少しだるくなります。
電動ポンプの本当のありがたさは、楽だということ以上に、その15〜20分を、ほかの作業に使えることだと思います。スイッチを入れておけば、勝手に空気が入っていきます。そのあいだに、船外機やクーラーボックスを浜まで運んだり、ロッドの準備をしたりできます。出航までの時間が、まるごと変わってきます。

もう1つの方法が、家で空気を入れてから持っていくことです。膨らませたまま運べれば、現地では下ろすだけで済みます。私がルーフキャリアを買おうと思ったのは、これがきっかけでした。
買ったのは、INNOのエアロラック(INT537BK)です。ただし、正直に書くと、まだボートを積んで走ったことはありません。実際に積んだら、そのときの様子を別の記事にします。

ボートはまだですが、ラック自体は、すでに活躍しています。キャンプのときに、コンテナボックスやテーブルを屋根に上げてしまえば、車内がぐっと広く使えます。ゴムボート用に買ったつもりが、今のところキャンプでの出番のほうが多いくらいです。


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なお、夏の炎天下に置いておくと、内圧は上がります。私自身は、これで困った経験はありませんが、組み立ててから船を出すまでに時間が空くときは、頭の片隅に置いておくとよいと思います。
逆に、保管するときは、入れすぎないほうがいいと考えています。私は室内保管のとき、空気を7割ほどにしています。気温の変化で内圧が上がるのが心配だからです。使うときは規定まで、しまうときはゆるめに。この使い分けをしています。
どちらを選ぶか
私の結論は、こうです。
- これから始める、続くかどうか分からない、屋内や屋根の下に保管できる → PVCで十分だと思います。私はこれでした
- 長く乗るつもり、出航の回数が多い、屋外保管になる、紫外線に長くさらされる → CSMを検討する価値があります。初期費用は高くても、年数で割れば逆転する可能性があります
どちらを選んでも、寿命を決めるのは保管だと思います。安いほうを選んで、そのぶん保管に気を使う。私がやっているのは、そういうことです。
まとめ
- PVCは手頃で張りがある。CSMは紫外線と熱に強く、温度で硬さが変わりにくいが、価格は高い
- 一般に言われる耐久年数は、CSMが10〜15年ほど、PVCが3〜10年ほど。差の中身は、主に接着部分の寿命
- 私は価格でPVCを選び、約6年。室内保管で、今のところ劣化は感じていません
- 規定の空気圧まで入れると、PVCのボートは想像よりずっと硬くなります。気室は均等に入れること
- フットポンプだと、0から規定圧まで15〜20分ほどかかります。電動ポンプなら、そのあいだに荷物を運んだり、準備を進められます
- ただし電動ポンプは音が大きいです。早朝で民家が近い日は、フットポンプか、家で膨らませて持っていくか
- 素材より、保管のほうが寿命に効くと思っています
装備一式と金額は、「2馬力ゴムボート一式を揃えたら総額いくら?」にまとめています。
参考にしたページ
この記事で紹介したもの
この記事に出てきた道具を、まとめておきます。


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