道具が一式そろうと、次に必ず悩むことが2つあります。「どこから出せばいいのか」と、「今日は出ていいのか」です。
私は2020年の12月から2年間で、22回出航しました。出航を取りやめたのは、現地での中止が1回、前日の中止が1回です。一緒に出た友人のボートが、着岸のときに波にのまれたこともあります。
この記事では、その経験から、出航場所の探し方と、出航するかどうかの決め方をまとめます。私の出航は、葉山と平塚が中心なので、三浦半島から湘南にかけての話になります。
そろえた装備と、かかった費用については、「2馬力ゴムボート一式を揃えたら総額いくら?」に書いています。
出航場所は、大きく2種類あります
有料の施設(マリーナや漁港のスロープなど)
駐車場、スロープや桟橋、水道などが整っています。料金はかかりますが、「ここから出していい」とはっきりしている安心感があります。
浜からの出航
料金はかかりませんが、駐車場から水際までの運搬、波、先にその海を使っている人たちとの関係など、自分で判断することが一気に増えます。
最初の数回は、有料の施設をおすすめします
私の進水式は、平塚のフィッシャリーナでした。初めての日は、ボートの組み立て、船外機の取り付け、荷物の積み込みだけで、頭がいっぱいになります。足場がしっかりしていて、波の影響を受けにくい場所を選んで、正解でした。

私が知る範囲では、三浦半島から湘南の近辺で、2馬力のゴムボートを出せる有料の施設は、平塚のフィッシャリーナと、葉山港の2か所です。平塚は、私が2020年から2022年にかけて、9回利用しました。葉山港は、私自身は利用したことがありませんが、ミニボートのビジター利用ができる施設として、あとで紹介する国の冊子にも載っています。
平塚のフィッシャリーナについては、平塚市の公式ページに、利用の案内があります。2026年9月の時点で、私が確認した内容は、次のとおりです。
- 料金は、漁港使用料が「艇長1メートルにつき100円」、浮桟橋の使用料が「2時間まで500円、以後1時間ごとに500円」
- 営業時間は、4月から9月が7時から17時、10月から3月が7時30分から17時(定休日は1月1日)
- 車でミニボートを積んで行く場合、隣の駐車場は午前4時から開いていますが、フィッシャリーナに入れるのは、営業開始の時間からです
- 利用上の注意として、「原則、船検書が必要」と書かれています。水上バイク、エンジンのない船、出力1.5kW未満のバッテリー式の電動機を主機とした船は、利用できないとされています
私が利用していた当時は、記憶では、1回あたり800円くらいでした。料金は変わっている可能性があるので、目安として見てください。
気をつけたいのは、出航できる時間です。営業開始が7時か7時30分なので、夜明け前後の「朝まずめ」には、海に出られません。安心と引き換えに、一番釣れる時間帯は逃すことになります。それでも、最初の数回は、こちらをおすすめします。
また、免許不要のボートには、船検書がありません。私は問題なく利用できていましたが、受け入れの条件や料金、手続きは、変わることがあります。初めて利用する前に、必ず施設に問い合わせてください。葉山港についても、同じです。
浜から出すなら、地図であたりを付けて、下見に行きます
浜からの出航は、場所選びで、その日の大変さがほとんど決まります。私は、次の2段階で探していました。
1. Googleマップとストリートビューで、あたりを付ける
まず、家でできることをします。Googleマップの航空写真で、海岸線を端から見ていきます。浜のすぐ近くに駐車場があるか。駐車場から浜まで、どんな道でつながっているか。ストリートビューに切り替えると、浜への入り口の段差や階段、柵、看板まで、かなり分かります。
この段階で、候補はだいぶ絞れます。
2. 実際に下見に行って、出せるかどうかを確かめる
あたりを付けたら、釣りをしない日に、下見だけをしに行きます。画面の上では良さそうでも、行ってみると無理だと分かる場所は、少なくありません。見ていたのは、次の点です。
- 駐車場があるか。朝まずめの時間から、停められるか。釣りは、夜明け前後が一番の時間帯です。ところが、駐車場が朝の8時にならないと開かない、という場所がよくあります。営業時間とゲートの有無は、必ず確認します
- 駐車場から浜までの道のり。段差や階段、狭い通路がないか。私は、階段でドーリーを引き上げて、取り付け金具を壊したことがあります
- ドーリーで引いていける距離と、傾斜か。ボートと荷物を合わせると、かなりの重さになります。行きは下りでも、帰りは、疲れた体で上りを引くことになります。砂が柔らかいと、タイヤが沈んで、さらに重くなります
- 波の状況。波が割れているようなサーフは、厳しいです。出るときも、戻るときも、難しくなります
- 砂浜の混み具合と、サーファーの多さ。海水浴の人、サーファー、ほかのマリンスポーツの人。その海には、先に使っている人たちがいます。人が多い浜は、候補から外します
- ローカルルール。エンジン付きのボートが禁止の期間や区域、出航や駐車についての決まりがある場所があります。看板を必ず読みます
できれば、下見は、実際に出航したい曜日と時間帯に行くのがおすすめです。平日の昼と、週末の早朝では、駐車場も、浜の混み具合も、まったく違います。
実際に何度か出してみて、やめた浜もあります。葉山の森戸海岸と大浜海岸は、それぞれ1〜2回で、使うのをやめました。
公的な資料も、参考になります
三浦半島のミニボートの出航場所については、国土交通省の関東運輸局が、「三浦半島 ミニボートゲレンデ セーフティーガイド」という冊子を公開しています。よく利用される場所として、葉山港、和田長浜、観音崎海岸、北下浦(野比)海岸の4か所が、駐車場や利用の手順、注意点と一緒に紹介されています。
読んでおきたいのは、場所ごとの注意点です。たとえば、和田長浜と観音崎海岸は、夏は海水浴場になるため、ミニボートは利用できないと書かれています。観音崎海岸は、歩道から海岸に入るところに、低い階段があります。北下浦(野比)海岸は、駐車場の利用に、前日までの予約が必要とされています。
ただし、この冊子は、作られてから10年以上が経っているようです。料金や駐車場の条件、利用のルールは、変わっている可能性があります。冊子は「どんな点を確認すればいいか」を知るために読んで、最新の状況は、必ず自分で確認してください。
このうち観音崎海岸は、私も下見に行きました。感じたのは、駐車場から浜までが、少し遠いということです。駐車場でボートを組み立てて、ドーリーで引いていこうとすると、歩道を通るにしても、車道を通るにしても、すんなりとは行けません。現実的なのは、先に浜の近くで荷物だけを降ろして、車を駐車場に停めてから、荷物を降ろした場所に戻って組み立てる、という手順だと思いました。冊子にも、同じやり方をしている人が多いと書かれています。荷物を降ろすときは、道路を通るバスやほかの車のじゃまにならないように、手早く済ませる必要があります。

地図で見ると「駐車場のすぐ近く」でも、荷物を持って歩くと、印象はまったく変わります。下見が大事だと思うのは、こういうところです。
良い場所は、教えてもらえません
身もふたもない話ですが、条件の良い出航場所は、人に聞いても、なかなか教えてもらえません。人が増えると、駐車や騒音の問題が起きて、出航そのものが禁止になることがあるからです。
私にも、このブログには書かない場所があります。意地悪ではなく、その場所を長く使わせてもらうためです。最初は有料の施設から始めて、少しずつ自分の足で下見をして探すのが、結局は近道だと思います。
「今日は出ない」を、どう決めるか
目安は、風速4m、波0.5m
出航をやめる目安にしていたのは、次の2つです。
- 風速が、4m/sを超える予報かどうか
- 波の高さが、0.5mを超える予報かどうか
この数字は、天気予報やアプリに出る、その海域の予報の数字です。目の前の海面の波の高さとは、別のものです。
ちなみに、先ほどの国土交通省の冊子には、ミニボートが安全に航行できる範囲の目安として、「波高20cmくらいまで、風速4m/s以下」と書かれています。波の高さが、船べりの高さの半分を超えると、危ないという考え方です。波高20cmというと、ほとんど凪の状態で、かなり厳しい数字に感じます。けれど、国がそう書くくらい、ミニボートは波に弱い乗り物だということは、覚えておいたほうがいいと思います。予報の数字が目安の内側でも、現地で海を見て「波があるな」と感じたら、出ません。

これは、あくまで私の目安です。2馬力のゴムボートは、軽くて、風に流されやすい乗り物です。フルスロットルでも、時速10kmほどしか出ません。風や潮が強くなると、戻りたくても、思うように戻れなくなります。「この数字までなら大丈夫」という意味ではなく、「この数字が見えたら、やめる方向で考える」という使い方をしていました。
予報は、1つだけを信じない
風と波の予報は、Windy、タイドグラフ、Yahoo!天気など、複数のアプリやサイトを見比べていました。予報どうしが食い違っているときは、悪いほうを信じます。
一番頼りにしていたのは、レンタルボート店の営業判断
数字の予報よりも頼りにしていたのが、出航場所の近くにある、レンタルボート店の営業判断です。
レンタルボート店は、その海を毎日見ているプロです。お客さんを海に出していいかどうかを、毎朝、責任を持って決めています。私が参考にしていた店では、朝の5時くらいに、その日に営業するかどうかが発表されていました。予報が微妙な日は、それを見てから決めていました。
私がよく出ていた海では、近くのレンタルボート店の手漕ぎボートが釣りをしている範囲と、私が釣りをしていた範囲が、ほとんど同じでした。周りに同じように釣りをしているボートがいるというのは、まったくの1人で浮いているのとは、安心感が違います。何かあったときに、気づいてもらえる可能性があるからです。
もちろん、手漕ぎボートの近くでは、スピードを落として、引き波を立てないようにします。エンジンが付いている側が、気をつかうのが筋だと思います。
プロが「今日はお客さんを出さない」と決めた海に、2馬力のゴムボートで出る理由は、ありません。これは、初めての方でも、その日からまねできる方法だと思います。
現地でやめた日
2022年の8月、現地まで行って、出航をやめたことがあります。理由は、濃い霧です。
霧の中では、自分のボートがほかの船から見えません。ゴムボートは、水面からの高さが低く、もともと見つけてもらいにくい乗り物です。準備をして、早起きをして、現地まで来てしまうと、「せっかく来たのだから」という気持ちが強くなります。それでも、その日は、陸からの釣りに切り替えました。
「現地でやめる」という選択肢を、家を出る前から持っておくことが、大事だと思います。
サーフからの出航は、私はもう、あまりしたくありません
2021年の9月、鵠沼のサーフから、友人のボートと一緒に出航しました。台風のうねりが残っていた日です。
問題は、帰りの着岸でした。波が割れる浜に戻るときは、波と波の間隔と、波が割れるタイミングを計って、波に対してまっすぐ(垂直に)進みます。少しでも斜めになると、波に押されてボートが横を向き、そのまま転覆してしまうからです。
私のボートは、無事に着岸できました。けれど、一緒に出ていた友人のボートは、波打ち際で波にのまれました。タックルボックスなどの荷物は水没して、乗っていた1人が海に落ちました。足の届く浅瀬だったので、事なきを得ましたが、もう少し沖だったらと思うと、今でもぞっとします。
この日は、サーファーの方も大勢いました。ボートは急に止まれませんし、急に曲がれません。行きも帰りも、人を避けながら進むのに、かなり神経を使いました。海の上では、先にそこにいる人が優先です。人が多い浜は、そもそも出航場所に選ばないほうがいいと、今は思います。
要点を知っていても、うまくいかないことがあります。だから、波が割れるようなサーフからの出航は、私はもう、あまりしたくないというのが本音です。そして、うねりが残っている日は、予報の数字が目安の内側でも、出ないほうがいいです。
ゴムボートは、怖がりすぎなくて大丈夫です
ここまで、やめる話と、危なかった話ばかり書いてきました。これから始める方を、必要以上に怖がらせてしまったかもしれません。
ミニボートの転覆事故は、ときどきニュースになります。ただ、私の実感では、ゴムボートは、そう簡単には転覆しません。左右に太い空気のチューブがあるので、片側に体重をかけても、ひっくり返る気配がないのです。転覆させようと思っても、難しいくらいだと感じます。22回の出航で、沖で「ひっくり返りそうだ」と感じたことは、一度もありませんでした。危なかったのは、先ほど書いた、波が割れる波打ち際だけです。
私のオレンジペコは、空気の部屋が、エアフロアを含めて4つに分かれています。ボート全体が、浮き輪のようなものです。1か所に穴が開いても、すぐに沈むことはありません。

同じ免許不要のボートでも、小型のFRPボートは、事情が違うようです。FRPのミニボートでは、転覆を防ぐために、船の両側に「サイドフロート」という浮きを取り付けている人を、よく見かけます。フロートを付けていない状態で、片側に体重が寄ると、転覆することがあるからです。ゴムボートは、最初から、両側に大きな浮きが付いているようなものです。
これは、身近で見た話でもあります。一緒に釣りに出ていた知人は、最初にFRPのミニボートを買いましたが、ほどなくして、ゴムボートに乗り換えました。あくまで個人の意見ですが、これから始める方には、私はゴムボートをおすすめします。
もちろん、絶対に大丈夫、とは言いません。ゴムボートで本当に気をつけたいのは、転覆よりも、風に流されて戻れなくなること、海に落ちること、そして、ほかの船に気づいてもらえないことです。ライフジャケットを必ず着て、この記事に書いた「出ない判断」さえ守っていれば、そこまで怖がる乗り物ではないと、私は思っています。
沖に出てからも、判断は続きます
- 風が変わったら、早めに戻る。時速10kmの乗り物だということを、忘れないようにしています
- 船酔いは、無理をしない。同乗者が船酔いをした日と、自分が酔った日は、どちらも早めに切り上げました
- 流されない工夫をする。私は、パラシュートアンカーを必ず持って行っていました。なくても釣りはできますが、風や潮で、ボートが思った以上に流されます
- できれば、1人では出ない。22回の出航のうち、周りに仲間のボートもいない、完全に1人だけの出航は、2回だけでした

まとめ
- 最初の数回は、有料の施設から。利用の条件は、必ず事前に施設へ確認する
- 浜から出すなら、Googleマップとストリートビューであたりを付けてから、釣りをしない日に下見をする。早朝の駐車、浜までの道のり、距離と傾斜、波、混み具合、ローカルルール
- 「やめる目安」は、予報で風速4m、波0.5m。ただし、数字よりも、現地の海と、レンタルボート店の営業判断を優先する
- 現地まで行ってからでも、やめていい
- 波が割れるサーフと、うねりの残る日は、避ける
海の上では、自分が船長です。海上保安庁のミニボート向けの安全情報にも、出航前に一度、目を通しておくことをおすすめします。
このボートで、実際にどれくらい魚が釣れたのかは、「2馬力ゴムボートで、魚は釣れるのか。22回出航した全記録と、正直な答え」にまとめています。


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